はじめに
先日最終化された改訂版コーポレートガバナンス・コードは、原則4-2の解釈指針で、現預金等の金融資産を成長投資等に有効活用できているか不断に検証すべきだと書いています。
取締役会は、自社の経営戦略や経営計画を踏まえ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に繋げるために適切なリスクテイクとなる経営資源の配分が実現されるよう、現預金等の金融資産や実物資産等の経営資源を成長投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべきである。
原則4-2(適切なリスクテイクを支える環境整備)の解釈指針
現預金を含めたこれらの資産を保有することは常に否定されるべきものではなく、会社が保有の必要性・合理性を説明できる限りにおいて、適正な水準の現預金等を保有することも経営資源の配分の一環として考えられることに留意が必要である。
成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について
ただし解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象ではありません。
また、金融庁と東証は、現預金を持つこと自体を否定していません。
問われているのは、その水準を説明できるかどうかです。
では日本の会社は今いくらくらいの現預金を持っているのか?
公開情報である2026年3月期の有価証券報告書から、連結決算をしている上場1,777社を集計してみました(金融業は現預金の意味が違うので除いています)。
数値から見えること
現預金は総資産の17.8%が真ん中。散らばりが大きく、上位25%は28.0%を超え、上位10%は42.1%を超える。

規模で並べると、TOPIX Core30が12.0%、Large70が9.7%、Mid400が12.3%でほとんど変わらない。Small 1が15.9%、Small 2が18.4%、TOPIX区分のない会社が20.8%で、小さいほど厚い。大型が一律に薄いのではなく、Mid400までが横ばいで、そこから小さくなるほど上がる。

業種で4倍以上の開きがある。情報・通信業が34%、サービス業が28%と高く、陸運業8%、食料品11%、鉄鋼12%が低い。

改訂コーポレートガバナンス・コードへの期待
日本の現預金の厚さは国際的にも指摘されています。
例えば、今回のコーポレートガバナンス・コード改訂のパブリックコメントで投資家から出た意見に、事務局説明資料の数字として、日本企業の現預金は総資産の16.5%(2024年)、米国8.5%、欧州9.0%というものがありました。
ただしこの16.5%は2024年の数字で、集計の範囲も今回の1,777社とは違うため、17.8%と直接は比べられません。少なくとも、日本が米国や欧州より厚いという構図は変わっていないように見えます。
また、投資家の82.4%が企業の現預金を多すぎると見ているのに対し、企業側でそう見ているのは29.7%という数字も並んでおり、今回の改訂を通じ、企業側の検討や説明が進むとよいなと思いました。
ただ、悩ましいのはどの程度であればよいのか、コードには一切書いていない点です。
解釈指針はコンプライ・オア・エクスプレインの対象でもないので、検証しないこと自体に説明義務は生じません。
それでも、今後このような重要な領域で、積極的に説明を行う企業はあらわれると思っています。
まとめ
このキャッシュで資本コストを超えるリターンを生む機会をどう見つけ、どう投資していくのか。そこには人的資本への投資も入ります。
各社が現預金の水準を自分の言葉で説明し、投資家と対話する。それが積み上がれば、国全体で現預金の使われ方は変わります。
その際、自己株買いのみには流れないでほしい、というのが私の願いです。
先週末の市場データを見る限り、PBRが1倍をきっている企業は1,379社(37.5%)あります。

改訂コーポレートガバナンス・コードを通じ、日本企業の抱えるPBR問題が一層改善に向かうことを期待します。

